自賠責と労災を併用できるか
「自賠責保険と労災保険は併用できるのか?」
仕事中 や 通勤途中 に交通事故にあった人であれば、誰もがこの疑問を持つと思います。
交通事故に遭って仕事ができなくなったり、通院して治療を受けたりするとなるとお金がかかります。
正社員で休養中も収入が保障されているのであれば問題ありませんが、そうでない人は困ると思いますし、家族を養っていたりすると切迫した気持ちになるかもしれません。
こうした負担を少しでも軽くするためにも、保険の特徴をきちんと把握して、少しでも多くもらえるようにすると安心だと思います。
自賠責保険と労災保険には両方請求できるの?
→できません。
交通事故に遭ったときに使える保険は、
- 自賠責保険
- 労災保険
- 健康保険
の 3 つがありますが、これらを併用して使うことはできません。
加害者の加入している自賠責保険から治療費を支払ってもらっているのに、会社の労災保険にも申請して治療費分を受け取るというようなことはできないわけです。
つまり、どれか一つを選ばなければならないということです。
しかし、休業損害に関しては、自賠責保険を使っていても労災保険から一部をもらうことができます。
このことを知る前に、どの保険を選んだらいいのかについて見ていきましょう。
休業損害補償はどこからもらうのがいいの?
まず、休業損害補償 を支払ってくれる保険には、先ほど登場した
- 自賠責保険
- 労災保険
- 健康保険
の3種類があるので、このうちどれか一つを選ぶことになります。
全てのところから もらえたら助かりますが、重複してもらうことはできません。
ですので、この三つのうちから一番多くもらえる保険を選ぶようにすると負担も軽くなるはずです。
では、どこが一番多く支払ってくれると思いますか?
それは、自賠責保険 です。
自賠責保険の場合は、過去 3 ヶ月間の給料から求めた、1 日分の休業損害補償の 全額 を受け取ることができます。
たとえば、あなたが 4 月に交通事故に遭ったなら、給料明細 や 収入証明 をもとに 1 ~ 3 月の収入を合計して、3 ヶ月間の日数で割って、1 日あたりの給料を計算します。
この計算で出た金額を、休んだ日数分だけ全額支払ってもらえるということですね。ただし、支給額には 19,000 円 / 1 日 という上限があるので注意しましょう。
これに対して労災保険の場合は、過去 3 ヶ月間の給料から求めた 1 日分の休業損害補償の8割相当額 しか受け取ることができません。
健康保険の場合は、標準報酬日額の6割相当額 しかもらえず、最大で 1 年 6 ヶ月間という支給期間が付いています。
このように保険によってもらえる額が違うので注意しなければなりません。
もし加害者が任意保険に加入しているのであれば、迷わずに 自賠責保険 から休業損害補償をもらうようにすると、もらえる金額は多くなります。
ただし、場合によっては自賠責保険ではなく、労災保険 や 健康保険 を使った方が良いケースもあります。これについては、
でまとめましたので、こちらを参考にしてください。
自賠責保険から休業損害をもらっていても労災へ請求できるの?
→できます。
前述の通り、あなたが自賠責保険で 休業損害補償 を受けていたら、労災保険 や 健康保険 からは、その日数分の休業損害補償を受けることはできません。なぜなら重複 してしまうからです。
しかし、労災保険から全く お金をもらえないのかというと、そういうわけではありません。
労災保険の休業損害補償は以下の 2 つ から構成されています。
- 休業補償給付 と呼ばれる保険給付部分 ( 6 割相当額 )
- 休業特別支給金 ( 2 割相当額 )
労災保険の8 割相当額の内訳はこうなっているわけです。
休業損害補償(8割)= 休業補償給付(6割 )+ 休業特別支給金(2割 )
となり、この 2 つを合わせて、前述で説明した 8 割分 になるわけです。
もし、自賠責保険から休業損害補償を受けた場合は、当然 労災保険で支給制限されるのですが、この制限を受けるのは 6 割相当額の保険給付部分のみ です。
残りの 2 割相当額 については支給制限は受けないので、自賠責保険から休業損害補償を受け取っていても、別途受け取ることが可能です。
必要な場合は労働基準監督署に 「 休業特別支給金 」 の申請手続きを忘れずに行うようにしましょう。そうしたらもらえます。
このことは任意保険の担当者も、労働基準監督署の方も、こちらから質問しなければ何も教えてくれませんでした。 ( 当然ですけど )
日本損害保険協会に聞いた際も、回答は得られませんでした。
会社の事務の担当者も、「 自賠責保険からもらっていたら労災保険からはもらえない 」 と返答をしていましたが違うんですね。
いろいろと調べて、労働基準監督署に確認してみたところ 「 もらえる 」 とのことで間違いないそうです。
ですので、私のように知らなかった人は、ぜひ申請して貰うようにしましょう。そして、療養中の生活費にあててください。
ただし、制度が変わることもあるかもしれませんし、事故のケースによってはもらえないこともあるかもしれないので、事前に労働基準監督署へ相談しておくと安心だと思います。私は専門家ではありませんので、自己責任で確認するようにしてください。
休業特別支給金は自賠責保険と同じ期間支払われるの?
→いいえ。
自賠責保険 の休業損害補償は、会社が休業証明を出した期間分を受け取ることができます。これは休んだ日に 年次有休休暇 を使っていても同じです。
一方、労災保険 の休業特別支給金は、休んだ日に年次有休休暇を使うと受け取ることができません。これは休業補償給付でも同じですね。
また、認められる対象期間は、医師が 「 仕事ができません 」 と判断する期間のみです。
これらの点にも注意しましょう。
申請の際に必要となる書類は?
交通事故に関する労災保険の手続きを行うときは、以下の書類が必要です。
- 第三者行為災害届
- 交通事故証明書
第三者行為災害届 に 交通事故証明書 を添付して申請します。
ちなみに、事故を起こしたときに警察署へ届出なかった場合は、交通事故証明書はもらえません。この場合は、交通事故発生届 が必要となります。詳しくは労働基準監督署に聞いてみてください。
自賠責保険と労災保険の併用が可能なのかについてはこんな感じです。
保険は複雑で難しいので わからないことも多いですが、一つ一つ確認していけば道は開けてくると思います。わからないことは専門家に相談するなどして解決していきましょう。
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